キューバからCUC(兌換ペソ)が無くなる!通貨が3種類のキューバで起きていること

キューバ

※追記(2021年7月18日)
この記事は2020年9月に発信したものです。当時、キューバの兌換ペソCUCが無くなる代わりにUSドルが使われるようになるという情報を書いたものですが、2021年6月以降はUSドルの使用が制限され、代わりにEUR(ユーロ)が扱われるようになっている状況です。

↓ 以下、2020年9月に更新したブログの内容となりますのでご了承ください。

キューバからCUC(兌換ペソ)が無くなる!通貨が3種類のキューバで起きていること(※2020年9月発信)

キューバでは国内で使われている通貨が、2種類あるのをご存知の方も多いかと思いますが、2020年現在はキューバに存在する通貨が3種類になっているのをご存知でしょうか?

  • CUP(Peso Cubano/人民ペソ)
  • CUC(Peso Cubano Convertible/兌換ペソ)

この2種類の通貨が、これまで1つの国の中で使用されていました。


しかし2020年に入ってから、第3の通貨とも言える アメリカの米ドルが使用されるようになり、キューバ国内はやや混乱状態。

そしてこの度、CUC(兌換ペソ)が廃止になり、USD(米ドル)が代わりに使用されることになる様子です。

しかしこの米ドルが使われる背景には複雑な条件だったり、格差の拡大などの問題も影響してきています。


この記事の前半では、そもそもキューバで2種類の通貨が使われるようになった理由など、簡単な歴史をまとめてあります。

後半では、今回米ドルが使用されることになった理由と、キューバ人の生活の視点で、現在キューバで起きていることを書いています。


また、ややこしいのでこの記事では3種類の通貨を以下の通りに色分けしています!
CUP(人民ペソ)
CUC(兌換ペソ)
USドル(アメリカドル)


そもそもなぜ2種類の通貨が使用されているのか

キューバの2種類のペソ CUP(人民ペソ)CUC(兌換ペソ) の違いを簡単に言ってしまうと、キューバ国民用の通貨と、外国人や金持ち向けの通貨 といったところです。


基本的にはCUP(人民ペソ)は国民が何か買う時に使用する通貨であり、もちろんキューバ人の給料もこのCUPで支払われます。
25 CUP = 1 CUC なのでCUPの価値は低いです。

キューバで「ペソ」と言うときは基本的にこちらのCUP(人民ペソ)のことです。


一方、いままで利用されていたCUC(兌換ペソ)は、実質USドルと同じレート。
1 CUC = 1 USD

観光客は通常、このCUC(兌換ペソ)を使ってタクシーに乗ったりレストランに行ったり支払いをするので、キューバに旅行をする際ほとんどの場合はCUP(人民ペソ)を使用する機会が無いかと思われます。

ハバナの観光スポットなどでは、入場料が「キューバ人:10 CUP(約40円)、外国人:10 CUC(約1,000円)」などと分かれていたり、ホテルや病院や店なども「国民用/外国人用」とはっきり分かれているのです。

キューバの経済はほとんどが観光によって支えられている状況。
実際にキューバ人の平均的な給料は、1ヶ月でなんと2,000円程度。
ハバナの一部は観光客でにぎわい華やかに見えど、ほとんどのキューバ国民の生活は決して豊かなものではありません。

だったら政府としては「外国から流れてくるお金をより多く得たい、取れるところから取りたい 」→ 「だから観光客はCUCで支払ってね!」というところなのです。


ドルとCUC キューバ通貨の歴史

今回CUCが無くなりUSドルに変わる」というニュースが広がっていますが、実は1994年から2004年までの10年間、キューバでは米ドルが使われていました。

その後2004年11月から、現在2020年までにかけて、米ドルの代わりとして新しくCUCが使われるようになったのです。

ちなみに元々キューバではCUP(人民ペソ)が一般的な通貨としてに使われているのは昔から変わりありません。


ではここで、大まかにキューバの通貨に関する歴史を解説します。


1990年代までキューバでは、アメリカとの国交を断絶し厳しく取り締まっていたので、ドルを所持することは禁止されていました。(ちなみに当時はアメリカ国旗の付いた服を着ていることですら禁止されていました。)

しかし、1990年初頭のソ連の崩壊により、経済的支援を失ったキューバは深刻な状況に陥りました。
そこで、当時フィデル・カストロは、海外(基本的ににアメリカ)へ亡命した移民のキューバ人が、キューバにいる家族にドルを送金することを緊急措置として許可

これにより当時はキューバにドルが流通され始めました。


ですが政府はいつまでもアメリカのドルをキューバに流出させるわけにはいきません。
ドルに相当する強力な通貨が必要だということで、ドルの代わりとして、2004年に政府はキューバ独自のCUC(兌換ペソ)を発行。

1 USD(米ドル) = 1 CUC、と価値はドルと同じです。

“キューバのドル” といった独自の形で、米ドルの代替として誕生したのです。

そして、この時代から現在に至るまで、キューバではこのCUC(兌換ペソ)と、元々あったCUP(人民ペソ)の2種類の通貨が一般的に使われていました。


次の項目では、今年2020年に再びドルが加わることになった流れについて説明します。


2020年キューバからCUCが無くなる理由

2004年以降、CUCという名のキューバドルと、CUP(人民ペソ)の2種類を国内で使い分けてきましたが、これらの通貨というのはキューバ以外の国では利用できません。

キューバでは、石油をベネズエラから、米をブラジルから輸入したりと、物資を外国からの輸入に頼っています。
そこで政府としては、キューバ国内でしか価値の無いCUCよりも、海外で価値のある通貨をもっと増やしたいのです。

つまりUSD(米ドル)です。

今までドルの代わりにCUCを使っていたものの、政府は「今後はドルを増やす」という方向に向かいました。


しかしここで重要なのが、国民には実物のドルを流通させないという点です。

「ドルを集めるけど国民には持たせない」

国民の手元に無くてどう経済を回すというのか?


先ほど述べた歴史の中で、ソ連崩壊後のフィデル・カストロがドルを許可した話を思い出してみてください。

そもそもキューバに入ってくるドルというのは、観光以外では海外に住むキューバ人から、キューバに住む家族への送金などがメインになります。

これまでは、例えばアメリカからキューバに100 USDを送金すると、自動的に100 CUCとして変換されるようになっていたのですが、現在はドル専用のカードというものが作られるようになり、その口座に宛てて海外からドルを送金できるようになります。

しかしここで問題なのが、入金されたそのドルを、ドルのまま現金として引き出すことが出来ない ということ。

このままだと、銀行=政府の管理下 にあるという状態です。

では、そのドルを使って買い物をするにはどうしたら良いでしょう?


実はここ数年キューバでは物資の不足が悪化し、さらに今年のコロナの打撃も加わって、2020年のキューバは食べるものも日用品もなかなか手に入らなくなり、気軽に買えないほどに値段も高騰しています。

だけど食料や生活必需品はどんなに値上がっても、どうにかして買わないと生きられないですよね。

そこでもし、この必要な商品を、誰かが独占していて販売したとしたら・・・?


キューバには政府が管理している店や施設というものがあるのですが、政府は今まさに、ドル支払い専用の店 を増やしています。

CUPや紙幣での支払いは受け付けません。
支払うには先ほどの、ドルが入金された専用のカードが必要なのです。

そして市民がこの店で支払ったドルというのは、どこへ行くのか?
もちろん、政府の管理する店ですから、最終的にドルは政府の元へ。


ドルの行方をまとめると

海外からキューバの家族へ入金 → 銀行の口座内(現金で引き出せない) → 政府の運営する店でカードで支払い →政府にドルが集まる


こうして、国民がドル紙幣を手元に持って溜め込むことなく、政府がドルを集めて独占する という、政府にとっては都合のよい仕組みができあがります。



物資不足、格差・・・キューバの社会問題

キューバで極端に物資が不足したのは、私が移住した2018年ごろから少しずつ始まっていました。

その頃は小麦粉や食用油や洗剤が店頭から消えることが多く、ようやく見つけた油のボトル1本に何倍もの値段がかけられていたり、パンが何週間も売られず、やっと売られても早朝から並ぶほどの大行列、といったことが日常茶飯事。
私たちも当時、洗剤を水で限界まで薄めて使っていたほどでした。

2020年現在、私はキューバを離れていますが、キューバの親戚からは「今までに無いくらい日増しに状況がひどくなっている」といった声をたびたび聞きます。

なんと、8 ペソ(約30円)程度だった歯磨き粉が、5 CUC(約500円)にまで高騰しているほどだそうです。
歯磨き粉一つ買うのに平均月収の4分の1です。
洗剤や石鹸やシャンプーなどの生活必需品も、同じように品薄になり価格が高騰しているそうです。
お金に余裕の無い世帯はどうしたらいいのでしょうか。。。


現在、私が感じるキューバの社会問題の一つとも言えるのが、緩やかに広がる貧富の差です。

貧富の差と言っても、その振れ幅はアメリカのような極端なものではありませんが、社会主義国と言えど特定の人たちはある程度豊かに暮らせています。

その境界線は、「国外にコネクションがあるか / ないか」の違いです。

先ほど説明しましたキューバでドルが運用される仕組みでもわかる通り、政府は「品薄だから専門店で高く売るけど、ドルしか受け付けないから、海外にいる親族に送金してもらってね」というスタンスです。

しかし大多数の人は、そんな都合よく外国に家族が住んでたり援助してもらえるわけではありません。

「援助してもらえない(海外に家族のいない)人間はどうなるんだ!」と、もちろん国内からは怒りの声が上がっています。

ドルが手に入らない人は、必要な物も買わせてもらえない。


今までのキューバ政府の「区別」の対象は、「外国人か / キューバ国民か」でしたが、今や「外国人 + 外国からの援助のあるキューバ国民か / 一般のキューバ国民か」のように見えます。

これ以上、一般のキューバ国民の生活が悪化しないことを祈りたいのですが、今のままでは非常に厳しい状況です。


今後のキューバの動き

いずれにしても今回のテーマであったCUCの廃止については、2020年10月から施行されると噂されていたのですが、先日ニュースで「いつから施行になるかは正式に決まっていない」と国の公式の発表があったそうです。

ただ、近いうちにCUCが使えなくなるのは確定している様子なので、正式に方向性が定まり次第、発表があるでしょう。


まとめ

最後に、この記事で紹介した重要なポイントを書いておきます!

・近々CUCが廃止になり、代わりにUSドルになる
・理由は、政府が世界で価値のある通貨(ドル)を増やしたいから
・国民はドルを現金では使用できない、ドル専用の口座とカードが必要
ドル払い専用の店が増えている
・国外からの送金に頼る必要がある
CUP(人民ペソ)は変わらず一般のキューバ国民に使用されることになる


今回この記事は、現地に住む親族からの情報などを参考に書いています。
情報に誤りがあった場合、ご指摘いただければ幸いです。

また、新しい情報が入り次第、修正・追記させていただきます!


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