12月がやってきました。
今年、筆者Natyにとって日本でクリスマスを過ごすのはなんと5年ぶりになります。
昨年までキューバに住んだり旅をしたりとしていた私は、過去にキューバでは2回ほどクリスマスや年末年始を過ごしました。
それ以前にクリスマスシーズンを海外で過ごした経験は、アメリカやヨーロッパといったベタな旅先ばかりで、ホリデー映画で観るような想像通りのキラキラしたクリスマスの印象しかありませんでした。
なので初めて冬にキューバを訪れると決まった時は、「常夏のカリブの島国ではクリスマスをどう過ごすのだろう」と想像のつかない世界を楽しみにしていました。
今から3年ほど前に初めてキューバで迎えたクリスマス。
そこでは意外なことが判明しましたのでブログにしてみました。
キューバとキリスト教
クリスマス(スペイン語:Navidad)は、言うまでもなくキリスト教徒にとっては大事な日ですよね。
歴史的に見ると、キューバはスペイン植民地時代の影響でカトリックが普及したものの、キューバ革命後にフィデル・カストロ政権により信仰を抑えられました。
しかしカトリックの名残や影響は残っていますし、今も街の中には教会や大聖堂も多く存在します。
一般的にラテンアメリカの国はカトリックの信仰が多いとされていますが、キューバの場合はちょっと特殊で、キューバ独特に派生したキリスト教の宗派が多く存在し、それぞれに異なるセイント(聖人)を信仰していたり、他にもヨルバなどアフリカ系由来の宗教も有名です。
ラテンアメリカの国にしては、かなり幅広く異なる宗教や信仰が多数存在しています。
あまりにも多くて複雑なので現地のキューバ人でさえも「キューバの宗教はよく分からない」と言うほどで、私もいまいち把握しきれていませんが、誰かの家に上がるとだいたいその宗教や宗派によって異なる像やお供え物などが置いてあるのを目にします。
同じ聖書を経典とするキリスト教であっても、属する宗派によってはキリスト像の十字架が壁に掛けてある家もあれば、十字架を飾ってはいけないという人たちもいるので、国全体としての共通の宗教の意識があるというよりは、広く多様な文化が共存し合っているようです。
クリスマス当日
「クリスマスはキューバの祝日だし、他の国みたいに派手にお祝いするのだろうか?」
「キューバらしく音楽かけてみんなで踊ったりご馳走を食べたり、大きなパーティーとかするのかな?」
キューバでの初めてのクリスマスに期待に胸を膨らませながら迎えた12月25日。
・・・しかし人々は何か変わった素振りを見せることは特にありません。
夫のヨンに聞いてみました。
(ちなみに彼はキリスト教徒です。)
「今日ってクリスマスだよね?なんかお祝いとかしないの・・・?」
「特に何もないよ!」
え、無いの?
仏教・神道が古くから信仰されている日本という国が、あんなにもクリスマスというイベントに振り回されて大騒ぎしているなか、
キリスト教の文化が広く普及しているこの国では、クリスマスを特に何も祝わないという皮肉・・・。
12月25日、一日過ごしてみても私たちの近所では特に誰もクリスマスらしいお祝いといったものはしておらず、「いつも通りの1日」だったのでした。
キューバと日本とクリスマス文化
では、なぜキューバではクリスマスのお祝いをする人があまりいないのでしょうか?
理由としては、「クリスマスツリー」「サンタクロース」といった、私たちが思い描くクリスマス自体が、そもそも欧米由来の文化であることです。
少し日本の話をしますが、
日本で今や当たり前のようになった12月のクリスマス文化も、元々は明治時代に外国から入ってきてから徐々に拡大し、今では本来の宗教的な理由に関係なく「クリスマス」というお祭りとして定着しました。
初めは外国からのキリスト教布教の目的で入ってきたものの、次第に「なんだか楽しそうだな」「(発展途上中の日本で)西洋の真似をしてみよう」と新しいものを吸収していき、国全体で盛り上がっていく。
まさに「祭り」の文化です。
近年で言うとハロウィンなんかが、まさにその祭り的ムーブメントになりましたよね。(ネガティブな問題も増えましたが)
日本は「異文化をとりあえず受け入れて、自分たちなりにアレンジしていく」というやり方で独自に発展してきた国でもあります。
キューバのクリスマスについて話を戻しますと、
キューバでは「クリスマス」「ハロウィン」などといった欧米的なノリのイベントが定着していないという点が非常に大きいです。
特にキューバという国が、外国(特にアメリカ)の物や文化が入ってこない・遮断された国であったからこそ余計に、外国の常識や流行に染まらずに独自の文化のままで維持してきたのではないかと私は思います。
クリスマスを祝う人たち
とはいえ、全く誰もがクリスマスを意識していないわけではありません。
12月も後半になると、家によってはちょっとしたデコレーションだったりツリーを飾っている家も見かけます。
少数ですがクリスマスを祝う人たちがいるのですが、私の見た範囲では3つのタイプの人々がいました。
① 教会へ行く人たち
一般的な理由ではありますが、やはり宗教上のイベントとして12月25日に教会へ行く人たちも多くいます。
ちょっとだけ覗いてみたことがありましたが、礼拝や歌など、結構多くの人が集まっているのを見ました。
教会もこの時期はクリスマス仕様にデコレーションをしていました。
② 外国の影響を受けている世帯
毎年、数多くのキューバ人が海外(ほとんどはアメリカ)へ移住し、彼らはキューバにいる家族に金銭や物を援助したりしています。
そのため、アメリカを始めとした海外の物や文化や流行などが、キューバにいる彼らの生活にも入ってくることが年々増えました。
そんな「海外にコネクションがある世帯」や「外国帰りのパパがいる家」など、ちょっと他よりリッチなお家は、欧米風のツリーやデコレーションなんかを飾っているところがありました。
またハバナなどは外国人が多く、外国の文化に接する機会が多い地域なので、こういった外国文化を取り入れる機会も多い様子です。
③ 海外趣向の若者
②にも少し近いですが、キューバでは近年、アメリカ的な文化に憧れる人も増えています。
その中でも、ロックやEDMを好んだり、スケボーに乗ったり、奇抜なファッションをしたりと、欧米カルチャーに影響された若者たちのグループも増え、ここ数年クリスマスやハロウィンなどにあえてパーティーしたりとするようになったそうです。
以前よりキューバ国内にインターネットが普及したことで、海外の情報を取り入れるようになった結果、新しい文化を自分たちで取り入れてみたり、リベラルでオープンマインドな若者が増えてきたように思います。
まだまだ少数派なので、都市から離れた地方だったり保守的な層からすると、彼らは「ちょっと変わってる」とか異端扱いされることもあるようです。
とはいえ日本も10~15年前くらいはそんな感じでした。(私がまさに彼らのようだったので。)
キューバでも今後、彼らのような世代がさらに増えて行く気がします。
12月の一大イベントは〇〇日
12月25日は、キューバでは上記のように一部の人を以外はほとんどが特別なお祝いをしないとお話しましたが、彼らにはクリスマスよりも大事にしているイベントがあります。
それは、
12月31日の年越しです!
年末、年越しこそが、キューバ人にとって一年の中で最大のパーティーであって、クリスマスよりも大事なのです。
12月31日こそ、親戚や家族やご近所さんなどみんなが大集合して、昼から用意したご馳走(豚の丸焼き)を食べ、飲んで歌って踊って・・・といった大騒ぎの日です。
キューバの年越しについては今度また詳しく記事を書きたいと思いますのでお楽しみに!
おわりに
今回この記事を書いていて思ったのが、
「〇〇ってどうなんだろう?」といった些細な疑問から、体験があり、理解があり、発見が生まれるということ。
「キューバのクリスマスってどんな感じなんだろう?」というちょっとした疑問ひとつから、体験してみて、新めて考えてみて、こうやって少し掘り下げてみることで私自身もいろんな発見がありました。
このブログでは今後も、私の体験を通して読者の方に「キューバに関する新たな発見」を与えられたらと思います。
それでは皆さま、素敵なクリスマス・年末年始をお過ごしください!
Naty