こんにちは、Natyです。
私は2018年から2019年まで少しの間、キューバの地方にある田舎町に住んでいたのですが、パートナーのヨンと一緒にキューバを離れてから先日ちょうど2年が経ちました。
移住当時は、それまで生きてきた環境に比べて明らかに不便でハードな環境に身を置くのは承知の上、誰一人として勧めてくる人はいない(というか不思議がられる)変わった選択であることは自覚していましたが、あらためて振り返ってみると良いことも悪いことも含めて愛おしい思い出です。
旅行客は多くとも実際に住むという日本人はかなり少数のキューバですが、「旅行」と「生活」の違いがかなり極端なのもキューバという国ならではかなとも思いました。
良い点も悪い点も挙げたらきりがないのですが、今日はその中でも私が感じたいくつかの良かったことや、しんどかったことというかメンタルがやられかけたことも振り返って、思い出に浸ろうと思います。
良かったこと
① 人の温かさ、助け合い
人見知りで勘繰りすぎ体質の私は、本当は仲良くなりたいのに人と距離感がうまくとれなかったり、「迷惑じゃないかな」とか余計なことを考えすぎてしまって妙にぎこちなくなったり、昔からなかなか周りに素直になれないタイプです。
だからなのか逆に、ラテンアメリカ特有の明るさで、家族の絆の深さだったり、誰でも気さくに話しかけて仲良くなれるノリだったり、感情をストレートに表わしてくれる感じが、意外とバランスが取れているのかちょうどよく感じます。
自分も複雑に考えずに自然体でいられるので生きやすいというか。
またキューバの生活では常に周りの人たちと協力したり助け合いながら、各コミュニティで繋がって生きているので、今まで日本のやや都会に近いところで生きてきた私にとっては新鮮でした。
私が子供の頃は日本でもご近所付き合いなどが多かった気がしますが、時代と共にそういった人付き合いの機会も減ってしまったからこそ、異国の土地で見知らぬ外国人の私に対して親切にしてくれる人たちの優しさだったり、キューバの家族や親戚たちの愛情や、顔を合わせば陽気に声をかけてくれる社会というのが温かくて嬉しかったです。
② 日本ではできない楽観的シンプルライフ
キューバといえば、先進国のように便利なテクノロジーも無ければ娯楽も限られている環境で(家や近所にインターネットも無い)、まるでひと昔前のような世界です。
現代の生活に慣れて「スマホが無いと生きられない!」という方には向いてないかもしれませんが、テクノロジー疲れしてしまった私のような人間には、少々不便だけど質素でシンプルな生活というのが素敵に見えてしまったようです。
コーヒーと本を片手に家の前のロッキングチェアに腰かけ、近所の人たちとテラス越しに挨拶を交わす朝のひと時。
ものが無い、やることが無い、気づくと誰もがすぐに暇を持て余しているので、日本では考えもできなかったような日々の過ごし方がいつしか自分にとって日常になっていました。
不思議なことにキューバで生活していた時期を振り返ると、そんなお年寄りみたいな過ごし方をしていた朝の時間だったり、面白みのない地味な時間のことばかりが毎回頭に浮かんで懐かしく感じます。
もちろん国の体制だったり不便すぎて困ることや食糧不足などと、綺麗ごとばかりで済ませられる環境ではありませんが、それでもなお、明るく楽観的に生きていこうと思えるのはキューバの人たちの強い精神と、厳しい状況でも前向きでいようとするエネルギーがあるからなのかなと感じます。
先進国という便利な世界に戻った今、ちょっとくらいのことで文句ばかり言ってちゃだめだなと、時々ふと考えさせられます。
③ アナログ生活によって知恵をフル活用
限られた物資しか無い世界で生活する上で、「今あるものを使ってどうにかする」という知恵をフル活用して考える習慣がつきました。
日本の100円ショップやネット通販がどれほど偉大だったかを実感するほど、それまで自分がいかに「だいたいの欲しいものが気軽に手に入る」という便利すぎる世界にいたのかを痛感。
キューバにはAmazonのようなネットショッピングも出来ないし、そもそも国内に流通している物資も限られているので、車や電化製品など壊れたものは何度も修理して長年使います。
そこで私も、生活していて必要なものが売っていなければ、知恵を働かせてDIYしたり工夫して自分で作るようになっていきました。
裁縫で布を再利用するのはもちろん、木の棒と空の瓶でアロマディフューザーを作ってみたり、虫よけの薬の代わりにお手製の罠を作って仕込んだり・・・。
きっと先人たちもこうやって「こんなものがあったらいいな」という思いから試行錯誤して文明を発達させてきたんだな・・・と思うと、今の時代に生きていることにありがたく思えてきます。
日々こんなふうに生活の知恵を絞りだしていることで、だんだんクリエイティブになってきて、脳が活性化された感じがしました。笑
④ 謎の外国人特権
キューバにいる間は特に外国人特権というものを感じることが多かったです。
外国人だからぼったくられる、というか国自体が「外国人料金」を認めている部分はありますが、逆にそのぶん一般の国民よりもクオリティの高いものを提供してもらえたりサービスしてもらえることもありました。
個人的には別にどっちでもいいんだけどなと思うこともありましたが、でも外国人のほぼいない私たちの町では「外国人だからいろいろ大目に見てくれた、周りから可愛がってもらえた」であろうことも多かったかもしれません。
実際、キューバは外国人に対しての差別の意識がかなり低い国だなというのを感じます。(冗談のつもりで馬鹿にしてくることはありますが、悪意や嫌悪感のある人種差別というのはあまりないです。)
特に私の生活していた町に外国人がほとんどいなくて、人々が外国人慣れてしておらず珍しかったせいか、やたらおもてなしをしてもらえることが多かったです。
ただ、一度スーパーの行列で、大して高いものを買ったわけじゃないのに順番待ちの行列を全員飛ばしてファストパス並みに優先させてもらえたのだけは、何だったのか未だに疑問です。笑
きつかったこと
① 食べ物
私にとってのキューバの食べ物のイメージはとにかく「油」と「砂糖」。
コーヒーやスムージーやお菓子、とにかく過剰な量の砂糖を入れて激甘にしがちなので、糖分の取りすぎでめちゃくちゃ体に悪い。
そして、キューバはお米が主食なのは嬉しいのですが、彼らお米に油を入れて炊くんですよね・・・。(衝撃。)
何かと料理にはがっつりと油が使われていることが多く、また時々チキンや豚肉などもの肉類も彼らは好んで食べるのですが、当時ベジタリアン気味な生活をしていた私にとっては結構しんどかったです・・・。
そんな「食」の問題は、本格的にキューバに住む以前に、たった1ヶ月の滞在でもかなり致命的なダメージを受けた思い出があり、今まで1年以上世界中を旅して日本を離れてもホームシックになったことがないのに、その時はたった1ヶ月で「日本食が食べたい・・・」と言って本当に半泣きしました。笑
移住後はだいぶ耐性がついたので大丈夫でしたが、食べ物って本当に精神状態を左右する重大な要素です。
② 孤独感、疎外感
当時はインターネットも家に無く自由に使えなかったので、リアルタイムで家族と連絡も取れなければキューバの外で何が起きているのかもよくわからず、日本から遠く離れた閉鎖された国の中にいるという感覚によくなりました。
その上、周りの人たちは親切ではあっても根本的に文化や価値観も違うので、なかなか深く親しい仲になれるような友達もできず、夫しか話す人がいない、夫以外に心からの理解者がいない、というような状態でした。
もちろん支えてくれた夫のヨンには感謝でしたが、何かと彼の負担も大きくなってしまうし、何よりキツいのは喧嘩したとき。
逃げ場がない。
きっと日本にいたら「気分転換にコンビニに行く」「友達と話す」「ネットで好きな動画ずっと観る」とか、いろいろリフレッシュ方法があると思うのですが、「この小さな田舎町で、友達もいないし、ネットも制限あるし、どこに行っても外国人だから目立つアウェーな環境で、どこに行けば心が休まるんだ?」と、自分の行き場が無いことで孤立感を感じました。
そんなこんなでいつもヨンにはストレスをぶちまけてしまい迷惑かけましたが、心の広い人なので何より感謝です。。
長期で新しい環境に住む場合、自分が安心できる場所や人、自分なりのストレス解消方法を見つけておくのって大事ですね。
③ 虫問題
海外のほかの国でも、熱帯地方や暖かめの地域などでは特にあるあるかと思います。
私は昔からトラウマレベルで虫が苦手なので、ただでさえ虫が視界に入るのに耐えられないのですが、キューバ生活中はアリ、コバエ、蚊、たまに現れる大きめのG・・・これらにはメンタルをやられかけました。
アリとコバエは常に家の中にいるような感じで、食べ物のにおいがする場所や洗ったはずの食器にまで気づくとコバエが群がっていたり、家じゅうのいたるところで大量のアリが行列を作って大移動している光景も何度となく遭遇します。
フミガシオンと言って定期的に薬剤の煙を撒いてくれる人が来るのですが(バルサンみたい煙で殺虫するやつ)、その効果も一時的なので、基本的にはこれら虫たちと共存して生きていました。
今思い出して書いていただけで鳥肌が立ってきた・・・。(本当に虫苦手。)
④ チスモソス
チスモソス(chismosos)=噂好きの人たち です。
ご近所さんとかですね。
キューバではインターネットもまだそんなに普及していなかったので、基本的には何もかも噂で人々は情報を得ます。
また、みんな時間があり余って暇しているので、やたら一日中外を眺めているご近所さんはまるでスパイ並みだし、人が集まれば世間話や噂話で盛り上がるのですが、時にプライベートなことやデリカシーの無いことを言ってたり、自分も質問されたりすることもあって、(彼らにとっては冗談だったりあまり悪気が無いのは分かるけど)時々しんどいなぁと感じていました。
それから、時に事実がねじ曲がった噂だったり憶測が広がっていくこともありますが、でもそれが誰か個人の話だった場合に当事者からしたらいい迷惑ですよね。
私はアジア人というだけで知らない間にその町では有名になっていたようで(?)、どうやら私たち夫婦のことも、よく知らない人たちが勝手に噂していたり中には「あの男は金目当てで外国人と結婚した」とか思っている人もいるようでした。(だったらわざわざキューバでこんな田舎に住まないだろうに・・・w)
「人のことは当人にしかわからないんだから余計なお世話!」と叫びたくなりますが、世界中どの社会でもそういう人はいっぱいいますよね。
こんなことを気にしていたらきりがないので「面倒な人とか噂好きな人とは距離を取ろう」と開き直りましたがその結果、元々のインドア精神が炸裂して家でひきこもっていたせいで、今度は「あの日本人まったく家から出てこない」という情報が噂になっていました。笑
要するにみんな暇ってことです。
おわりに
私たちがキューバで過ごした頃から丸二年が経ってしまいましたが、ちょうどその時期から食料や物資の不足や価格高騰が始まり、2021年現在では当時よりずいぶん状況が悪化していると聞きます。
心配になるニュースもありますが、現地で暮らす人々の生活がこれ以上厳しいものにならないことを遠くから祈りつつ、いつかまた帰ってお世話になった親戚たちへ今度は恩返しができるようになれたらいいなと思っています。
私は人生の多くの時間を日本で過ごし、世界中いろいろな国を旅して時には一時的に生活してみたりもしましたが、どこへ行っても良い部分や悪い部分などは必ずありました。
それは国によって文化やその時の情勢などによる特徴も様々で、さらに自分という個人の経験や感覚のフィルターがかかることで印象が左右されるのは興味深いことだなと感じます。
このブログCubaBiyoriでは、Natyという私個人のフィルターを通した世界のほんの一部を、今後もシェアしていきたいと思います!