よくいろんな国に旅行をする方はご存知かもしれませんが、先進国ではなく経済水準の低い国などの観光地で、日本人やアジア人が歩いていると「Chino/China!」「你好!」「Japón!」などと呼ばれたり、目を吊り上げるジェスチャーをされることがあります。
他の国でも体験したことはありますが、キューバでも結構多くこの場面に遭遇するので、初めて旅行に行った時は少し衝撃でした。
この記事では、キューバに”人種差別”はあるのか、そしてキューバ人の”差別に対する意識”についてをお話させていただきます。
Chino(チノ)/China(チナ) とは
Chino/China というのは、スペイン語では中国人という意味ですが、アジア人の総称として使われます。
ちなみに、アジア人じゃなくても目の切れ長な人のことも、あだ名のように「chino/china」と呼んだりもするらしく、私よりも切れ長な目を持つキューバ人の夫Yonも、よく近所の人から「chino!」と呼ばれていたそうです。
disってるの?
私は最初、道を歩けば「china!」と呼ばれるのがすごく嫌で、言われるたびにイラッとしてました。
中国人でもなければ、そもそも見た目の特徴を言ったり「おいアジア人」「そこの日本人」みたいに呼ばて、うざっ!って毎回思っていました。
人種問題や差別意識に対して敏感な今の世の中、こういった言動が許せないと思う人は多いはず。
しかし、私はこの件や差別の問題について、キューバ人の彼らと直接話してみてから少しだけ意識が変わりました。
この記事を読んでいる皆さんにも、一つだけ理解しておいて欲しいことがあります。
キューバ人の多くの人は、悪意があって言ってるわけじゃないんです。
「それが他の国では失礼にあたる」ということを、ただ知らないんです。
以前、キューバ人の夫に「人種とか国籍をいじると、他の国だったら差別だって言われるよ」と話した時に彼は、キューバの外の世界で人々がどのような意識を持っているのか を知り、驚いていました。
「外国だとそんなことになるの?!僕たちキューバ人は、自分たちの肌の色や見た目のことを普通に言い合うけど、それが普通だったから誰も気にしていないんだ。
僕らにとっては、例えばアジア人の目だったり特徴が珍しいと思うけど、それが悪いなんて思ってないし、馬鹿にしたいとは全く思ってないんだよ。むしろそれは個性なんだから!」
そう聞いた時は、思わぬ返答だったので私も驚きました。
キューバと差別意識
キューバでは、黒人系や白人系や混血など、様々なルーツを持った人々が共存しています。
Yonと知り合った頃、「キューバには肌の色とかで差別ってあるの?」と気になって聞いたことがありましたが、答えは「NO」でした。
「そんなのはキューバには無いよ。どっちが良いとか優位だとかそんなものなく、みんな一緒に同じように暮らしてるよ!」と彼は答えました。
それまで、アメリカのように人種やコミュニティ意識の強い国を見ていたせいで、その答えが少し新鮮に感じたのを覚えています。
ちなみにキューバでは、肌の色がどうだとか、太ってる痩せてるとか、彼らは相手に直接言うことがありますが、それが良いとか悪いとか区別があるわけではありません。
Yonの回答に補足するなら、「肌の色や見た目の話をすることが、そもそも誰も差別だと思っていない」というのが正しいのかもしれません。
実際、Yonの実家があるキューバの田舎で、家族や近所の人みんなから ”china”、”chinita” と愛称のように、まるでそれが当たり前かのように呼ばれていました。
最初はちょっと反応しづらくて困ったものの、彼らにとってそれが当たり前の文化なのだと、開き直ると次第になんとも思わなくなるように。
特に、観光客もほとんどいない田舎町に住む彼らにとっては、初めて接するアジア人 が私でした。
彼らは、キューバの閉鎖された中の常識だけで育ってきて、外の文化に触れることも知ることも、通常はありません。
私がYonに説明した時のように、「chinaって呼ぶのは、別の国では失礼になるらしいよ!」と、Yonが彼らにも説明をして初めて「そうなの?」と知る人ばかりでした。
たとえ話ですが、日本のお年寄りが、日本にやって来た白人を見て「アメリカさんかい」「鼻が高いね」と反応してしまうのってどうでしょうか。
白人というだけで一括りにアメリカ人だと言うのも非アメリカ人からしたら嫌でしょうし、「鼻が高い」も日本では褒め言葉ですが、欧米では嫌がる人も多いのが事実。
言った本人は悪気があったわけでなく、昔の時代ではそういった表現が普通だったのでしょう。
ただ、外国人と話す機会もなければ、ネットを使って情報を知ることもなく、今の世の中の風潮を「知らない」だけ なのでは?
もちろん、chino/chinaと呼ばれて「はい、こんにちは~」とヘラヘラしてろと言っているわけではありません。
ただ、「差別だ!」と頭から決めつけるのでなく、ちょっと深呼吸して想像してみてほしい、ということを伝えたいのです。
「嫌な気持ちをした」という人の気持ちもわかりますが、彼らの背景にも目を向けてみると、少しだけ捉え方が変わるかもしれません。
それでも、どうしても気持ちが収まらないなら、「私たちの文化では、そういうのは失礼だと思う人が多いから、あまり良くないんだよ」と、事実を、的確に教えてあげればいいと思います。
アジア人とコンプレックス
最後にもうひとつ、個人的に思ったこと。
昔からアジア人に対するステレオタイプっていろんなものがあって、もちろん中には悪意あるものもいっぱいあったのは事実です。
でも、いろんな人の意見を見て聞いていて思うのは、日本人が自分たちのルックスに極端に謙遜しすぎるようになって、勝手にネガティブになってないかな?とも時に感じます。
正直このことに関しての悪の根源は、元をたどれば政治的な意図にも繋がりますが、メディアが無理やり押し付けてきたイメージです。
いつしか「太ってる=悪」のような恐怖を植え付けられ、世界的に見たらめちゃくちゃ痩せている日本人なのに、口を開けば「痩せたい」が口癖の人ばかり。
いわゆる”白人コンプレックス”と呼ばれる「白人=美」みたいな意識を植え付けたり、テレビや雑誌や広告にハーフや白人っぽい人ばっかり推して、何かと欧米的な外見を絶賛。
もちろん人の好みはそれぞれだけれども、男女どちらも「アジア人=世界的に見たらブサイク」って思い込んで気にしすぎてるのは、他者より自分たちの方が強いんじゃないかな?
恥ずかしながら以前は私も、メディアの洗脳のせいで、外見にコンプレックスがありました。
若い頃は、「もっと目が大きかったらな」とか「顔の骨格ごと変えたい」とか思っていました。
だけどアジアの外に出てみると意外と、「髪の質が良くて羨ましい」「アジア人は肌が綺麗で超若く見える」「アジア人風の切れ長の目ってかっこいいよね」など、日本人からは言われたことの無いようなポイントが評価されることが多くあります。
海外で生まれ育った日系人の人って、血筋は私たちと同じ純日本人なのに、堂々としている人が多いですよね。
他にも、海外で有名になったり人気になるアジア人って、アジア人としての自分の魅せ方を知っている ような感じがします。
どんな人種でも、すっぴんでも、服が地味でも、容姿にコンプレックスがあっても、堂々としている人はある程度かっこ良く見える ということに気づきました。
謙虚さや控えめでいることが美徳と考えられるのは、日本の素晴らしい文化ではありますが、海外では弱く見られてしまってかえって損してしまいます。
今後、海外に出る人はそんなことも意識してみるといいかと思います。
とはいえ世界中には(もちろん日本にも)、初めから特定の人種に対して嫌悪感を持って接してくる人だったり、悪意があって嫌がらせをしたりからかってくる人も一定数いるのも現実。
そういう差別主義者や舐めてる人に関しては、毅然とした態度でいるのが一番です。
冷静に上手いことを言い返せるなら良いですが、関わりたくない人は視界にすら入れずゴミだと思って避けましょう。
人種についてのトピックは非常にデリケートですし、国や文化、または個人によっては捉え方や考え方も全然違います。
今回は、私Natyの思ったことや体験をもとにして、意見を書かせていただきました。
皮を剥げば人類みな同じ。
多少の個人の違いは尊重し合い、仲良く協力していきたいものです。